新しいKIRINJI~「恋の気配」とコトリンゴ
しばらく前、兄弟デュオだったキリンジのことを書きました。
その続編です。
兄弟デュオ時代の話はコチラ
キリンジは弟・堀込泰行が脱退したあと兄・堀込高樹が暖簾を引き継ぎ
2013年夏、6人組バンド"KIRINJI"として再スタートを切りました。
メンバーは(左から)
楠 均(くすのきひとし) Ds,Per,Vo
弓木英梨乃(ゆみきえりの) G,Vn,Vo
田村玄一(たむらげんいち) Pedalsteel,Steelpan,G,Vo
堀込高樹(ほりごめたかき) Vo,G
千ヶ崎学(ちがさきまなぶ) B,Vo
コトリンゴ Pf,Key,Vo
再始動時の年齢が23歳から58歳と世代幅が広すぎます
特徴としては女性が二人入ったことと全員が歌えるということ。
新しい始まりを告げるかのような「進水式」という曲で幕開け。
2枚目のアルバムになると以前のキリンジ色が大きく変わりました。
そのアルバム『ネオ』(2016)は
ヒップホップ・アーティストとのコラボで どアタマからラップ・バリバリだし
ほかにはディスコっぽい曲あり ボサノバあり、
かと思うとおしゃれポップスにバラード・・・まるでおもちゃ箱
相変わらず高樹の曲がメインではあるけど
高樹以外のメンバーがリードボーカルをとる曲も増えました。
さて、ここからが本題。
『ネオ』に入っている「恋の気配」という曲にフォーカスをあてます。
リードボーカルをとるのはキーボードのコトリンゴ。
彼女はとてもアーティスティックで
アメリカのバークリー音楽大学卒業、
坂本龍一に見いだされデビュー と資質は申し分ない人です。
2017年一世を風靡したアニメ映画『この世界の片隅に』では
主題歌を歌うなど全音楽を担当し 音楽各賞を受賞。
(ちなみに監督・脚本の片渕須直はワタクシの同窓生です)
恋の気配/KIRINJI (2016)
"恋の予感"と"秋の気配"を合体させたような曲名で
そのあたりをイメージしてしまいがちですが、
こちらは独特の音感性がみられます。
この曲をお兄ちゃん・高樹が作詞作曲したとは!ビックリしました!!
驚いたのは曲の構成で、
イントロからAメロ~サビ~間奏まですべて
|AM7 |A♭7sus4・A♭7 |EM7(9) |B♭dim7 |
この4小節だけのくりかえし!
歌詞もいつもの高樹のこねくり回した羅列ではなく
ギュッと凝縮したコトバを置いています。
「秋は夕暮れ・・・」と枕草子の一節ではじまり
死生観が描かれる堀辰雄の小節「風立ちぬ」のタイトルをさらっと入れたり、
「嘘は優しい でも嘘なら罪です」とか「金木犀 香りが重いね」とか
ふわっとしてるかのようだけど そこはかとなくネガティブな気持ちが漂う。
「愛を拒んでいるわけではないけど」
と最後まで葛藤・・・
カフェでBGMになるような、ラウンジ・ポップのようで
コトリンゴの頼りなげなボイスと相まって
浮遊感たっぷり、安心どっぷりサウンドです。
コトリンゴの存在はKIRINJIに深く影響を与えたはず、
声とは逆で頼り甲斐あるサウンドアドバイザーだったのではないでしょうか。
しかし2017年の暮れ、コトリンゴはKIRINJIを脱退してしまいます。
彼女が抜けてしまった穴は大きいでしょう。
キーボード&ピアノの音は?
あのほんわかボイス曲はどうするのか?
翌2018年5人のKIRINJIは新しいアルバムを発表し、その答えを出しました。
そのあたりは また書くかもしれないし書かないかもしれないし・・・・・
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